映画【その土曜日、7時58分】 感想
公開:2007年
監督:シドニー・ルメット
シドニー・ルメット監督の遺作となった犯罪映画です。
あらすじは、とある兄弟が自分たちの両親が経営する宝石店に強盗に入ろうと計画するところから始まる、とあります。
実際は、冒頭いきなり覆面をかぶった男が宝石店に押し入り店の老婆を脅しますが、返り討ちに遭ってしまう一部始終が描かれています。
あらすじを読んでからこの冒頭シーンを見ると、この覆面男が兄弟のひとりなのではないかと考えますよね。
しかし、その一部始終を車内で見ていた男が焦って車を出し、現場から逃走します。
この男性が兄弟の弟・ハンクであり、この逃走から時間を巻き戻すように強盗計画前の場面が始まります。
時系列操作が最大限に面白くなるような、引きつけられる冒頭シーンですよね。
弟・ハンクは離婚後、娘の養育費を滞納していて経済的に困窮しています。ただ、どうにかして娘を喜ばせたいという気概はあります。そして、冒頭のシーンから若干予想できるとおり隙の多い人物です。
兄・アンディは会社の重役として働いているので一見裕福そうにみえますが、会社の金を横領しているので監査までに資金繰りをしなければなりません。しかも、麻薬漬けの日々を送っています。
目的が一致した2人は犯行日に向けそれぞれ活動します。
この映画を見ると、これまで見てきた映画に登場する悪役は結構切れ者だったんだ、と変な感心をさせられます
度胸が無くて、もともと頭の悪い人が犯罪に手を染めるとこうなるんだなあ、とわかりました。(私も確実にこうなる)
ただ、最後の兄による惨劇は、”普通”だった人が堕ちてしまう感じがあって生々しく恐ろしいです。進むことも戻ることもできないあの状況で、ある意味”無敵の人”になってしまった人はサイコパスみたいな存在よりも脅威的だと感じました。
あと、一家の父親はかつて堅気ではなかったのではないか、という意見が散見されます。その説に関する伏線がいくつかあり、そう考えるのは妥当だと思います。
ただ、そうなるとこの映画が持つ普遍性が薄れてしまう気がしてなりません。
それは、私がこの映画はどこにでもいる一家が息子たちの小さな目論みから崩壊していく姿が肝だと思っているからです。
必死に育ててきたはずの子供たちに親孝行どころか裏切られ、母親に至っては結果的に殺されてしまう、この悲劇的展開がより浮かび上がってくるべきです。
そして、父がやる時はやる人だとわかっていたのなら、兄弟は父がいるはずの店に強盗することのリスクを知っていたはずです。(これは、兄弟がそれほど馬鹿で無知だということを表しているのかもしれません)
しかし、父が昔に悪さをしていたとなるとこのような見方もできます。
自身が足を洗った現在にその過去が巡り巡って、最愛の妻にかえってきてしまう、という因果応報の物語となり、これも良いですよね。
一見、単純なサスペンスに見えますが、非常に多角的な見方ができる映画だと思いました。
父親と一家に関する考察がある方はぜひコメントをいただきたいです!
読んでいただきありがとうございました!😊