映画【ナイトクローラー】 感想とたわごと
公開:2014年
監督:ダン・ギルロイ
ロサンゼルスでひとりの青年が這い上がっていくサクセスストーリーです。
ただ、やり方がエグいのです。
この映画を見ると、いかに社会病質者はマスコミに向いているかがわかります。
主人公ルイス・ブルームはある夜事件現場に遭遇し、そこに群がるカメラマンたちを目撃します。
そこで、事故や事件の映像を間近で記録してそれで商売をしている人々がいることを知ります。彼はすぐさま盗品と警察無線受信機を交換して、この業界に飛び込みました。
ルイスは何の躊躇も無い性格なので、彼は業界で非常に速いペースで成功していきます。競合相手が踏み入れられない領域にまで突っ込んでいきます。
しかも、彼は恐るべき手段で競合相手を妨害し、その”様子”さえも商売の道具にします。
(サイコパスキャラって相手に牙をむくのが早すぎますよね。「悪の法則」のマルキナさんを思い出しました)
映像はいつもニュース番組のディレクターであるニーナに売り込みます。
最初は彼女がルイスに指図している感がありますが、そのパワーバランスはすぐに逆転していきます。終盤に至っては、ニーナは完全にルイスに圧倒されてますよね。
そして彼は多くの番組からオファーを受けるようになっていくのです。
日頃から思うのですが、自分の才能を見つけるのって難しいですよね。
おそらくルイスはこれまで、自分にはどんな才能があるのか、それをどう生かせばいいのかわからないので模索し、そのたびに失敗していたのだと思います。
作中では彼の過去は語られていませんが、一度底辺まで落ちて前科がある可能性もあると思います。そんな中、彼は自分の才能に気づき天職を見つけました。
ただ、サイコパス的な傾向の強い人は社会的に成功しやすい、というのもよく聞きますよね。
この映画はある意味サイコパスの良い側面(社会的成功)と悪い側面のどちらも描いていて、しかもその二つの側面が重なっているのがとても新しいと思いました。
そして超個人的な感想なのですが、私はルイスの様子を見てるとこの人を思い出します
この方は岡田栄悟氏といって、2014年に業務上横領の容疑で逮捕されています。岡田氏が代表を務めていたNPО団体は、東日本大震災で被災した岩手県山田町から多くの事業を委託されていましたが、彼はその巨額な復興予算を私的に食いつぶしてしまったようなのです。(本当の火事場泥棒でした)
問い詰められたら自己正当化で反撃したり、一切申し訳なさが伝わらないところ。あと、絶対に誰かの指示の下では動きたくないという断固とした部分が本当にルイスに似てると思いました。
動画の②だったかもしれませんが、岡田氏は高校生のころ川で溺れていた子供を助けて表彰されたと語られています。
それ自体はもちろん讃えられるべき行為ですし、岡田氏はこの出来事がきっかけで自身の”才能”に気付き水難救助の世界に飛び込んだとされます。
ただ、悪行が明るみに出てからとなると岡田氏にとって人命救助は自分の承認欲求を満たしてくれるいい道具だったのかもしれません。
そしてルイスも、人に勝つという成功体験を味わせてくれるうえ、大金を手にできるこの仕事は自分の欲望を叶えてくれる存在でしたね。
しかもルイスはその悪行をこちら側に間近に見せつけているので、より彼の魂胆が伝わってきます。
ただ、最後にルイスは自身のことを人の破滅の瞬間に顔を出す男だと称します。
この言葉から、マスコミやジャーナリストの本質みたいなものを性悪的に捉えていて、自分やこの業界のことをかなり客観視していると思いました。
彼は自分の仕事に罪悪感を持っていないと考えられますが、ルイスという人物の奥深さが見えて恐ろしかったです。
ルイスは大成功を遂げてこの物語は幕を閉じますが、彼の人生がこの安泰のまま続く気は全くしません。それは、己の欲深さゆえ転落してしまった岡田氏を見ると特にそう感じます。
現実では会いたくないですが、映画で見る分にはサイコパスは興味深くて面白い存在ですよね!
主演のジェイク・ギレンホールの役作り含めて恐ろしい映画でした。
本当におもしろかったなあ😊
読んでいただきありがとうございました!!